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巣鶴鈴慕の話 [尺八]


琴古流尺八本曲に「巣鶴鈴慕」という曲があります。惑星探査機ボイジャー2号に搭載されたゴールデンディスクに収録されている一曲です。


琴古流本曲は黒沢琴古が全国を行脚して集めた36曲になります。この「巣鶴鈴慕」という曲については宇治の吸江庵(きゅうこうあん)の庵主・龍安より一月寺の虚無僧・残水が伝授され、それを黒沢琴古に伝えられたとされ、当時の曲名は「鶴巣籠」だとされています。


私はこれまで鶴というと「タンチョウ」しか思い浮かべることが出来ませんでした。


30年前、真冬の北海道釧路市の近郊鶴居村までタンチョウを見に行ったことがあります。タンチョウを観察しましたが、玉音やコロコロには程遠い鳴き声でした。


果たして「巣鶴鈴慕」の鶴は「タンチョウ」だったのかという疑問を持ちながら演奏しておりました。




越冬で鶴が飛来するのは鹿児島県出水市が有名ですがタンチョウの飛来は確認されていないようです。出水市で確認されているのはナベヅル、クロヅル、マナヅル、カナダヅル、ソデグロヅルなどです。


シベリアから越冬で鹿児島県出水市まで飛行するのですから、餌場があれば琵琶湖周辺に途中降り立っても不思議ではありません。


タンチョウがシベリアから中国東南部へ越冬のため飛来しているというルートもあるようなので、過去に琵琶湖経由で鹿児島県出水市までのコースをたどったタンチョウがいてもおかしくないかもしれません。本州では2007年12月山口県で1羽、2010年2月愛知県で1羽飛来したようで写真掲載されています。


しかし、曲の題材とするにはある程度の個体数がないと「ツル」という名前や習性などの知識が定着しないはずです。そういった意味では今でも出水市までの越冬飛行ルートを持つツルで個体数が多いものが琵琶湖近郊で題材となったのではなかったのかと考えるわけです。


日本野鳥の会のHPに鶴の鳴き声がサンプリングされていました。それを聞いた限りでは、曲の元となった鶴の鳴き声は「ナベヅル」ではないかと思いました。




しばらくの間、「巣鶴鈴慕」は「ナベヅル」を意識して演奏したいと思います。






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